エフェクターの話をしよう

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Bondi effects / Del Mar Overdrive

 今回はBondi effectsのDel marを取り上げようかと思います。

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 このDel mar、筆者がお気に入りのペダルをいくつか挙げる際にはかなりの頻度で選ぶくらいにお気に入りのペダルであったりします。

 まずはブランドの紹介から。
 Bondi effectsはオーストラリアのペダルメーカーで、代表作はklon centaur系と言われるsick as overdrive。sick asはカスタムカラーや限定仕様のようなバリエーションモデルも多く出てます。プロアマ問わず沢山のギタリストの足元に置かれているペダルじゃないでしょうか。めちゃくちゃ人気ですよね。
 他にもBOSSのDM-2やIbanezのAD-80辺りがモチーフになっていそうなArt Van delayなどがラインナップされてます。種類はそう多くないですが粒揃いなメーカーの印象です。

 

Del mar Overdriveとは(歴史編)

 そんなBondi effectsの、sick asに続いてリリースされたペダルがDel marです。リリースは2014年頃だったと思うのでおよそ8年前でしょうか。当時といえばVEMURAMのJan rayなどがとても流行していた時期で、実の所Del marはさほど大きな話題にはなってなかったように思います。実際、オリジナルのDel marは諸事情あったらしく2017年に生産終了になってしまっています。

 その後、同2017年に後継機種と位置付けられたBreakers Overdriveがリリースされ、今も販売されていますが、これはDel marとは結構違う感じですね。(この辺はちょっと後程改めて触れます)

 しかし2018〜9年辺りになると、Del marはマテウス・アサトなどを初めとする著名なギタリスト達がペダルボードに入れている、という事で一躍脚光を浴びる事になります。その結果中古市場が大変に高騰する事になったりしましたね。
※一時は2000ドルを超えたらしいとか。当時のレートが1ドル110円くらいだったので、およそ日本円で22万円くらいでしょうか。私の所有しているオリジナルの箱を見たら、元値はどうも199ドルだったらしいです。

 そんな2019年、BondiのビルダーのJonはオリジナルDel marに改善できる点がまだあると思っていたそうで、オリジナルの高騰も見兼ねたのか、同年のBlack Fridayの特別企画としてリマスター版のDel mar(世にいうリイシュー)がリリースされる事となります。
 これは直販70台限定で、12分ほどで売り切れたらしいのですが、日本では代理店のumbrella companyさんの尽力などもあり、受注生産で限定販売されました。これも受注上限が最大で100台程度という事だったので、実際世界全部で何台くらいあるんでしょうかね...?各国代理店にどの程度出したのかがわからないので正確な所は分かりませんが、何千台もあるってことはないと思うので、多くても1000くらいじゃないかと思っています。

 このリイシューもこの2019年一回限りの生産だった上、その後も有名ギタリストがボードに入れた例などがちらほらとあったので、リイシューの中古相場も上がったりと色々あったのですが、近頃はオリジナルと比べれば国内の相場はおとなしい気がしますね。(オリジナルは依然高いままですが...)

 余談になりますが、自分はオリジナルが普通に販売されていた当時はJan rayをメインで使っていて、(Jan rayと)同じようにトランスペアレント系を謳ってる物なら別にいいかなとか言ってしっかり弾いてみる事すらしておらず、販売終了後に知人の持っているのを弾いてみたらめちゃくちゃ良いじゃん...ってなって大変後悔しまして、リイシュー出た時真っ先に飛びついた愚かな人間です。その後結局オリジナル欲しくなってリイシュー売って資金作ってオリジナル買いました。本当に昔の自分は大変に愚かでした...(結局当時の販売価格の倍以上は出したので)

 ...という事で、ここまでDel marの歴史っぽいものなどを長々書いてしまったのですが、ここから具体的にペダルの概要や音について触れていきたいと思います。


Del mar Overdriveとは(サウンド編)

 Del marはどのようなコンセプトのオーバードライブかと言いますと、"Tubescreamer とMarshall Blues Breaker のコンセプトを継承し、Bondi Effects独自のチューニングを加えて開発されたペダル"とされています。後継機種は名前もBreakersですし、元になった物の納得感はありますね。

 コントロールはLevel、Gain、Treble、Bassとボイシングの切り替えのトグルスイッチと、一般的な感じの構成です。特徴としては、Gainコントロールは2軸ポットになっていて、クリーンシグナルとオーバードライブのシグナルがミックスされる回路になっています。EQセクションはブースト/カット両方出来るタイプの物ですね。
 トグルスイッチは、上にするとコンプ感控えめなオープンな感じのサウンドに、下にするとコンプ感強めのサウンドになります。扱う上での注意としては、ペダル内部で昇圧を行っているのでセンターマイナスの9Vアダプター専用です。間違って12Vとか18Vを入れると壊れます。この辺りはcentaurとか他の内部昇圧を行うペダルと同じですね。

 音の印象の話をしますと、Bondi effectsのペダルの多くに共通した要素として、トレブル成分が強めに出るのですが、Del marもその例に漏れずギターのトレブルの辺りが結構出ます。それでいてそうしたペダルにありがちな、歪んだ際に音の芯が細い感じにはなりませんね。この辺りはクリーンをブレンドする回路構成がいい仕事をしているのではないかと思います。

 クリーンシグナルのブレンドをしている為か、ケンタっぽさを感じる人もいるみたいです。人によってはこのペダルを2014年周辺の時期に多数出てきた4ノブのトランスペアレント系に位置付ける人もいるみたいなのですが、個人的な見解では「トランスペアレント系ではない」と思っています。
※2014年当時はまだペダルの知識も乏しく、自分もてっきりトランスペアレント系と思っていたんですが、後々ちゃんと弾いてみた結果違うと判断しました。


 じゃあ何系なのかって言われるとちょっとどこに入れようかという向きもあるんですが...。自分はオリジナルはBlues Breakerとケンタ(klon centaur)を足して2で割った感じが一番近く感じているかもしれません。ちなみにリイシュー版はオリジナルと比べたら相当トランスペアレント系に寄った感じなので、トランスペアレント系の類だと思っています。

 

オリジナルとリイシューの違い

 最大の違いは内部昇圧の値が18Vから27Vに変わっている事です。この変更によってヘッドルームが広くなっているので、リイシューの方が音が歪みにくくクリアな音色になっています。些細ではありますが昇圧が大きくなった分か消費電流量も上がってます。(オリジナル→20mA、リイシュー→100mA) 

 前に何かペダルを置いて、Del marを後ろに置く場合などはリイシューの方が音が潰れなくて良いように思います。その反面、オリジナルDel marにあった独特な雰囲気というか、ちょうどいいバランスでBlues Brakerとケンタが混ざったような感じがリイシューでは薄れてしまっているので、そこが好きな人にはちょっと不満に感じる点ではあるかもしれませんね。

 贅沢な使い方をするなら、前にオリジナル、後にリイシューを置いてオリジナルでリイシューをブーストするとめちゃくちゃ良いですね。めちゃくちゃ金持ちの道楽って感じしますけど。

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筆者所有のオリジナルDel mar(シリアル12)。イギリスにあった個体を輸入したとか。

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筆者が以前所有していたリイシューDel mar。オリジナルにはなかった紙帯がついている。

 

 そう言えば脇道に逸れた話題になりますが、先述した現行製品のBreakersは、随分とBlues Breaker側に寄った感じの仕上がりになっていて、クリアなBlues Brekerというのが近い感じです。これはこれで良いペダルではあるんですが、Del marとはだいぶ違うので、後継機だから代用できるという類のものではないと思いました。

 

 ...という事で、今回はDel marについての記事でした。歪みペダル1つの話としては随分長い記事になってしまったのですが、通算でリイシュー1台、オリジナル2台買ったくらいにはお気に入りのペダルなので、参考になれば幸いです。オリジナルもリイシューももう中古探すしかないので手に入れるとなると大変ではあるのですが、個人的にはベストなODの一つなので、機会があれば是非触れてみて欲しいなと思っています。

 それではまた次の記事でお会いしましょう。