特別編:kinotone Ribbons
こんにちは。今回は番外編(買ってないペダルの話)です。
実は先日仲間内で機材会(いわゆる機材を持ち寄ってワイワイ鳴らしたりする集まり)をしまして、その際に以前から気になっていた海外ペダルをお借りする事が出来まして。せっかくなので簡単に紹介などをする記事にしてみようかと。
お借りしたのはこちら、kinotoneのRibbonsというペダルです。
貸して下さったmaさん、本当にありがとうございます!
kinotoneについて
kinotoneはミネソタ州のミネアポリスで、ビルダーのJaak(ジャックと読むそう)が一人でやっているブランドだそうです。ビルダーのJaakは現地で電気工学やコンピュータ工学といった分野のエンジニアをされているらしく、このブランドを始める前はオートバイや農業機械向けのエレクトロニクスの設計をしたり、ご本人が所属するコミュニティ内でシンセやアンプといったものの修理事業をしたり、と言った事をされていたようです。
同ブランドのデビュー作がこのRibbonsで、磁気テープの劣化をコンセプトにした「磁気テープエミュレータ」となっています。ちなみにステレオ対応で、信号はアナログで処理しつつデジタルでコントロールしているようです。どこかChase Bliss Audio(以下CBA)のコンセプトに近い感じがしますね。余談になりますが、CBAも本拠地がミネソタ州ミネアポリスなので、同じ都市にあって、同じようなコンセプトのものを出してるので横の繋がりとかもあるのかもしれませんね。
今回の記事の本題
このペダルのリリースと同時期に、CBAから同様にテープ系のエミュレート(こちらのコンセプトは"VHSテープの世代損失")を志向したGeneration Loss MKⅡがリリースされていて、しかもこちらは自分で買っている...となればもう比べてみるしかない、という事で今回は双方の比較に重点を置いてみようかと思っています。
Ribbonsについて
前提として、Ribbonsは磁気テープを用いた際に起きる音質の劣化や揺れといった物を付加するペダルで、何かこれといった特定の機種を志向したものではないようです。
特徴としては、MIDIやCVでの操作もできる事、4トラックのルーパーモードがある事、リバーブが付いている事などでしょうか。touchスイッチで追加効果(テープストップやリピーター、他にテープが壊れた時のような挙動なども可能)を付与することもできます。
コントロールが少し複雑なのですが、4つのノブにそれぞれ4つのパラメータが対応していて、基本はペダル中央のプッシュボタンを押す事で切り替えて操作が出来る形ですね。ルーパーモードの起動も単体だとプッシュボタン+フットスイッチになるので、足下で単体でルーパーモードと通常モードの行き来は難しそうです。
また、コントロール面で個人的に面白いなと思った点がありまして、リバーブのMixコントロールが、Mixノブが12時の位置で0%、12時を境に左に回すとテープエフェクトの前でリバーブがかかり、右に回すとテープエフェクトの後でリバーブがかかる仕様になってるんです。その辺って大抵はノブ1つで解決せずにスイッチつけたり内部的に操作する仕様だったりする所だと思うんですけどね。その代わり0〜100%をノブ全体の半分の幅で調整する都合上、微調整しにくいと言う側面もありますが...。
こちらの強みは、ルーパー/リバーブの存在と、Touchスイッチに割り当てられる機能が豊富な事でしょうか。それと本体だけで呼び出せるプリセット数が8つと多めです。これもフットスイッチのみで呼び出し出来ないのがちょっと惜しくはありますが...。
全体的に多機能な分、操作が足だけでは完結しきれないとか、微調整が難しいと言った部分があって、その辺りを解消したければMIDIを使いましょうと言う感じがしますね...。
音を出してみた感想としては、これまた調整が難しいとか音が結構ピーキーだな、とか...そういう感じではあったのですが、音はしっかりテープの劣化している感じや揺れを表現出来ているように思います。テープ系の中でも割とぐにゃっと揺らぐタイプで、エフェクト感強めです。ただテープシミュといってもディレイ要素はないので、テープエコー系とはまた違う感じですね。
同系統(ディレイなしのテープエフェクト)というと先述のGeneration Loss(Cooper fx版、CBA版問わず)とか、tefi vintage labのGolden Eraとかでしょうか。Golden Eraはvinyl(レコード)のシミュですがこれも似たようなものかなと...。
参考までにYoutubeで見つけたデモを貼っておきます。
Generation Loss MKⅡについて
元々Generation LossはCooper fxというメーカーからリリースされていたペダルで、何世代かのバージョンチェンジを経た最新系がCBAからリリースされたMKⅡになります。
具体的には、Cooper fxからリリースされた初代V1→Cooper fxとCBAのコラボによるCBA版mkⅠ→Cooper版V2のリリースの後、Cooper fxの開発者のtomがCBAに加入するといった経緯を経て、今回のCBAによるMKⅡがリリースされた形になってます。
V2については以前記事を書いてますので、そちらも参考にしていただければと思いますが、Generation LossはVHSテープによる損失をコンセプトにしていて、MKⅡになっての大きな変化としては、コントロールが一新されていて、直感的にテープ系の劣化したLo-Fiサウンドを作る事ができるようになっています。(加えてCBAお得意の本体上部側面のDipスイッチで、旧来と同様の挙動をするクラシックモードが実装されているので、MKⅠと同じ使用感で音を作り込む事も可能)
こちらの強みとしては、ある程度まで直感的に音作りが出来る事、そしてCBAお馴染みのDipスイッチの存在でしょうか。Dipスイッチを用いたコントロールを用いる事で、本体のみで特定のパラメーターを周期的に動かすと言った事が出来たりします。隠しモードなどもこちらからアクセスできます(説明書に書いてあります)。それ以外だと、ステレオアウトを使用する際に特殊なステレオ処理を行えるモードも付いてますね。
音に関しては、今までのGeneration Lossを踏襲しつつ、より実機に近い雰囲気の音作りが出来るようになっている印象を受けました。Classicモードにすれば実在しない想像上のテープマシンを作り上げる事も出来ますが。幅広く作れる感じで、薄くローファイな雰囲気を出すサチュレーションや揺らぎをつけるみたいな事から、テープマシンがぶっ壊れたみたいな奇々怪々なサウンドまでいけますね。
それから、USBの端子がついておりまして、そちらを用いてAbleton Liveからプラグイン経由で本体をコントロール出来るソフトが開発されていまして、PCと連携させたりできます。詳しくは本国HPのLess Controllerのページを見てみてください。どうもMax for Live使って作ったみたいで、Liveでしか動かないのが玉に瑕ですが...。デジタルリコールみたいな事が出来るのでDTMでも使えるかもしれません。
大抵のDTMerにとってテープ系シミュってフリーでも優秀なソフト出てますし、プラグイン使っちゃった方が手取り早い部分はあるのが切ない所ですけどね...。
USB端子があると言うことは何らかのアップデートにも対応できるのかも...?という気もするのですが、取扱説明書などに記載がないのでこの辺りは現時点ではまだ不明です。
こちらもYoutubeからデモを貼っておきます。
双方の共通点・相違点
共通点
相違点
- コンセプトが違う(Ribbons:磁気テープの劣化、GenLoss:VHSテープの世代損失)
- 本体だけでのプリセット可能数(Ribbons:8個、GenLoss:2個)
- 右フットスイッチへ割り当てられる機能が異なる
- リバーブ、ルーパーの有無(Ribbonsにあって、GenLossにない)
- Dipスイッチの有無(Ribbonsになく、GenLossにある)
すごく大雑把にまとめるとこのような感じでしょうか。それぞれできる事が違うし、良いポイントも違うので、それぞれの人にどちらが合うかはちょっと分かりませんが、参考になったらいいなと思います。
あと、入手性について触れると、現状日本ではGeneration Loss MKⅡの方が圧倒的に入手しやすいですね。代理店(アンブレラカンパニーさん)があるし、生産も比較的安定してますので...。Ribbonsは直販のみなので...。
最後に
今回取り上げたRibbonsですが、kinotoneのインスタグラムの投稿によると、近日追加されるバッチ(販売在庫)が当面の最終ロットになりそうだとの事です。もし欲しい人がいたらメーリングリストとか登録して注視しておくと良いかもしれません。それとファームのアップデートも計画されているようです。実は現状のRibbonsってオンにした際にARIONのペダルみたいに音量がやや上がるのですが、そうした不具合の修正なども含まれるそうです。そちらも楽しみですね。
改めて、このペダルを貸して下さったmaさん、ありがとうございました!
今回は特別編なのでこのくらいで。それでは、また次の記事で。