エフェクターの話をしよう

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Spaceman effects Sputnik Ⅲ (Limited)

 こんにちは。本日のお題はSpaceman effectsのゲルマニウムファズ、SputnikⅢです。

Sputnik Ⅲ Limited こちらはホワイトカラーのモデル。他にも色々な色があるようです。


 Spaceman effectsはアメリカのオレゴン州ポートランドのペダルメーカーです。筐体含めて全てUSAメイドにこだわっていることと、全体的にレトロフューチャーなSFっぽさのあるデザインなこと、そして当時の機器と同じようにフルアナログの回路で作っているのが特徴のブランドですね。実際にペダルの名前も過去の宇宙開発において用いられたロケットやスペースシャトル、それから天体の名前などが使われていますし、付属品にも宇宙飛行士の装備品を彷彿とさせる銀色のシートが使われた袋が付いていたりします。

付属品諸々。説明書も認定書っぽい見た目になっていました。




 またラインナップの特徴としてStandard LineとLimited Lineというのがありまして、コンポーネントなどを厳選した上で作られているLimited Lineと、ハンドビルトなことは同様であるものの、生産面で効率化を図っていたりパーツも入手性のいいものを用いたりした量産向けのStandard Lineという差別化がされていたりします。カスタムカラーは大体Limitedの方から出ている感じみたいです。

 日本へは記録にある辺りだと2011年頃には入ってきていたみたいで、当時の代理店等はちょっとわからないのですが、現在は宮地楽器さんがWTG(ワールドトレードギア)という海外製品を取り扱う部門で国内に仕入れてきているみたいです。
 プロの使用例ですと、アジカンのゴッチこと後藤正文さんが2018年のツアーの時にAtlas IIIというブースターや、Voyager Iというオプティカル式のアナログトレモロを使用していたという記載があったりしますね。

 当該ブログの記事をそれぞれリンクしておきます。

Voyger Ⅰについての記事
Atlas Ⅲについての記事
 

そんなSpaceman effectsのフラッグシップファズがSputnikⅢで、ヴィンテージのソビエトゲルマニウムトランジスタを使ったファズとなっています。

最大の特徴がトランス等を用いたピックアップシュミレーション回路の採用で、ペダルの位置を問わずにベストな挙動をしてくれるようになっています。
 一般的なファズのほとんどはハイインピーダンスの信号を受ける前提で作ってあり、ギターとファズの間に何かペダルが入った場合に想定しない音の変化が起きることがありますが、この回路を入れる事でハイインピーダンスの信号をエミュレートする事で、ローインピーダンスの信号が入ってもギターの直後に繋いだ時と変わらない動作が出来るようになっています。それこそワウの後で使うのも、他の歪みペダルの後で使うのも自由になるので、音作りの幅が非常に広がりますね。 ※奇遇なことに、この前書いたPhantom fxのSabbath "Black Gaze"にも同じような回路が組み込まれていましたね。

 コントロールは以下のようになっています。
SIGNAL:アウトプットのボリューム
RANGE:ファズのゲイン
CALIBRATE:FILTERスイッチと連動したトーンコントロール
SCAN:発振する帯域や発振のボリュームをコントロールする(DRIFTモード時のみ動作)
FILTER(トグルスイッチ):CALIBRATEノブの操作でロールオフする帯域の選択
DRIFT(フットスイッチ):DRIFTモード(サウンドに破壊をもたらすモード)へ切り替え
 ※このスイッチはフットスイッチを押し込んだ状態で電源を入れることで動作をラッチ/アンラッチで切り替えることが出来ます。踏んだらそのままにしたいか、踏んでる間だけ切り替えたいかで選べるので便利ですね。
BYPASS(フットスイッチ):オンオフの切り替え。トゥルーバイパスのソフトスイッチになっています。

 音はゲルマニウム系の正統派のファズという感じですね。ノーマルモードは本当に正統派で、ゲインもオーバードライブ的な範囲からしっかりファズという所まで幅広く使えます。歪みの質としてはファズとして作られたペダルなので、ローゲイン帯では少しローミッドが膨らむ感があり、ファズらしくサステインは長めですね。音が良く伸びます。
 ボリュームへの反応も良くて、ギター側を絞ればちゃんとゲインが下がるので、ギターの出力とペダル側の設定次第ではギター絞ってクリーンを出すことも可能ですね。
 例えばテレキャスのシングルコイルでRANGEが9時より下ならギターのボリュームが6前後の所でクリーンまで持っていける感じでした。この設定だとギター全開にした時にミッドゲインのファズオーバードライブっぽい歪みになります。
 DRIFTモードは結構ピーキーな感じで、設定によってはひたすら発振をしたり、弾いた時にだけアッパーオクターブ的な発振を加えたりといったことが出来ます。設定次第で発振させない事も可能です。SCANノブとCALIBRATE(トーン)とFILTERトグルの設定が相互に関係して発振の仕方や音がかなり変化するのですが、この複数のノブが相互に作用する辺りはZ.Vexのファズファクトリーに通ずる雰囲気もしますね。

 総評として、オーソドックスに使えつつ、飛び道具にもなる便利なゲルマニウム系ファズかなと思います。価格的に安くはないので万人におすすめはしにくいですが...。
 ただ、ブランド全体の宇宙を意識したモチーフ性とかが秀逸なブランドだと思うので、宇宙とそれにまつわるロマンみたいなものがお好きな方は是非一度Spaceman effectsのペダルを手に取ってみてはいかがかな、と思います。

 次の記事はもう少し間の開かないうちに出したいと思います。それではまた。