エフェクターの話をしよう

ラッコ(twitter ID:rakko_lau)がエフェクターのレビューやらをするブログです。コメント等はお気軽にどうぞ。

Walrus audio / VOYAGER

 こんにちは。

 今回は国内でもすっかり普及した感のあるWalrus audioより、初期からラインナップにあるオーバードライブ、VOYAGERのレビューです。

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 このVOYAGER、筆者は国内にWalrus audioが流通すると話が出た頃に、見た目の良さに一目惚れして、取り寄せて買った事がありまして。その後自分の当時の音の好みに合わなくなったと言う事で手放してしまった為、手元にないのでレビューの予定はなかったのです。
 ところが、なんとこの度Walrus audioの現代理店のパール楽器さんがお年玉企画としてツイッターで開催していたVOYAGERのプレゼント企画に当選してしまいまして、ペダルが届いたのでせっかくだしレビューしようか...ということで今回の記事です。

 

 前置きが長くなりましたが、Walrus audioについても軽く紹介しますと、2011年に米国オクラホマ州で始まったペダルブランドです。ここまでの10年で廃盤品入れると多分30個くらいはペダルをリリースしてます。

 ラインナップも歪み、揺れもの、空間系、EQ、パワーサプライと割と幅広く出していて、アーティストシグネチャーモデルのペダルなんかもリリースしてました(電源系は多分PSEの関係で国内に正規のルートでは入ってこないと思いますが、個人輸入して使ってる方はいるらしいです)。
 数機種は持っていた事もありますが、全体的にポストロック/アンビエント/シューゲイザー/オルタナ方面に向いた音が出るブランドの印象です。

 

 ここからは実際にVOYAGERに関してですが、基本的にはローゲインな3ノブオーバードライブです。 コントロールもVol、Gain、Toneのシンプルな構成です。 音の雰囲気としては、ミッドに特徴があるタイプの音です。ケンタウロスに似ている、と評する人もいるようですね(実際ケンタウロスと比較された動画がYoutubeとかに上がってたはず)。回路自体はそこまで似てないらしい?んですが…。

 個人的な音の印象ではややハイファイなケンタ系という感じです。
 単体でも結構いい感じに使えるのですが、多分一番映える使い方はゲインを低めに設定した上で後段の歪みをブーストする使い方ですね。ハイミッドが結構出るので、抜けのいい音になります。 弱点としては、ハイが強めに出るのでどうしても設定や組み合わせるもの次第でハイがパリパリと割れたような音になってしまう点ですね...。それもあるので僕個人はややトーンを下げた設定で使うのが好きです。トーンを下げるとややダークな感じにも出来るので。 好き嫌いは分かれると思いますが、いいペダルです。気になった方は是非試してみてください。

 それでは。

Sommer Cableを紹介したい

 こんにちは、あるいはこんばんは。
 今回の記事は多分1本の記事のボリュームとしてはこのブログ史上最大になるので、めちゃくちゃ長いです。お時間のある時に読んでいただければと思います。
 早速ですが、本日はペダルではなく、最近使っているケーブル類に関してレビューを交えつつ紹介してみようかなと思います。

 最近自分は主にSommer Cableというところのものを切り売りで入手して、プラグをオヤイデ電気で買って組んだものを使っています。(スピーカー用とか、動かさない部分の線などはノイマンとかmogamiとか別の線を使用していますが、いずれにしろ自作品が中心)


 そんな訳で、今回はSommer Cableに関して紹介していこうと思います。

  • Sommer Cableとは
  • SC-The Spirit XXL
  • SC-CLASIQUE
  • SC-CORONA
  • SC-The Silver Spirit
  • SC-Spirit LLX
  • SC-Spirit BLACK ZILK
  • SC-GARILEO 238
  • SC-CLUB RED ZILK
  • COLONEL INCREDIBLE 
  • おまけ
Sommer Cableとは

Sommer Cableはドイツにある、ドイツ国内でトップシェアを誇るケーブルメーカーです。"OFC(無酸素銅)線による圧倒的な伝導率と独自のシールド技術、そして他に類を見ない「ケーブルのしなやかさ」が特長です。他メーカーと比べ、電気特性の驚異的な正確さと誤差の少なさが認知され、現在では115ヶ国以上で採用されています"とのこと。

 実際使っていて感じる特徴は、どの線も他社の物と比較して柔らかく、丈夫である事。それと比較的軽量な線が多いのも特徴ですね。(同じくらいの太さの他の線と比較して軽いという感じ)

 元々ドイツのメーカーですので、近年まではギャレットオーディオさんで扱われているものを切り売りで買うか、あとは海外から直輸入するしか入手手段がほとんどなかったのですが、2019年末くらいからオヤイデ さんでも一部ケーブルの切り売り、そしてカタログにある線の切り売りの取り寄せが可能になっていまして、色々と取り寄せてご紹介してみようかと思った次第です。※切り売りに関しての記事はこちらの記事を、取り寄せに関してはこちらの記事を参照してください。

 本当は2020年の1年間で興味の赴くままに色んな線を取り寄せて作ったので、この際ブログのネタにでもしようか、と思い立ったのが実情ですが、せっかくなので以下、紹介していきます。
 そんなわけで、ギター/ベース/シンセなどで使えそうな物を中心に紹介していきます。おまけでそれ以外(自分がヘッドホンリケーブルやマイクケーブル用に手を出した物)も少しだけ紹介予定です。
 なお、今回は比較の為の参考に手持ちのmogamiの3368を使っております。また、各ケーブルの代理店製品ページもしくはメーカー製品ページ(英文)のリンクを載せてありますので、詳細なスペック等はそちらを参照していただければと思います。
 それでは、ケーブルの紹介へ移りたいと思います。

SC-The Spirit XXL

代理店商品ページ/本国商品ページ 

 

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 見た目がちょっと深海魚っぽいなんて言われ方もするケーブルですね。 音に関しては、3368と比較した場合に少しだけミッドに寄せたような音です。それでいてちゃんとバランスの取れた鳴り方をしている感じ。取り回しが良い&歪みのノリがいいので入門の1本目にいいかも。 

SC-CLASIQUE

代理店商品ページ/本国商品ページ

 

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 とてもビンテージっぽい音の傾向。それでいてパワーの不足を感じたり、音の細さを感じるような事がないので、個人的にはすごく好きです。 色は複数ありまして、写真は黒+白の物ですが、他に黒+青の物、ツイード風の見た目の物がラインナップされてます。お好みの色をどうぞ。

SC-CORONA

本国商品ページ

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 バランスの取れた出音でありつつも、前2種に比べた場合ハイファイな傾向ですね。特に1〜3弦が綺麗に鳴る感じ。巻き弦はちょっと暴れる感じがありますね。 見た目はXXLを全部銀色にしたみたいな派手な感じです。外の皮膜の色がこちらは透明、XXLがスモークグレーなだけとも言えますが。
SC-The Silver Spirit

本国商品ページ/オヤイデの紹介記事

 

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 名前と違い、見た目のシルバー感はありませんが、芯線の導体に6NのOFCに銀メッキ線を使っています。 他のsommerの物と比較すると取り回しはやや硬めです。 音は、芯線が銀メッキな事もあってハイファイ寄りな音だと思うのですが、Coronaと比較した場合に少しローがスッキリしているのか、やや落ち着いた音に聞こえます。結果クリーントーンがとても綺麗に出ます。代わりに歪みを踏むとやや硬めの音に仕上がるので、そこで好き嫌いが分かれそうな印象。 

SC-Spirit LLX

代理店商品ページ/本国商品ページ

 

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 線の硬さはsilver spiltよりは柔らかく、XXLやCoronaよりは少しだけ硬いかな、というくらいの塩梅。しなやかではあるけどしっかりした感じというか。(言葉で伝えづらいのですが) 音は、バランスがとても良い上で力強い音が出ます。ここまでのケーブルの中でも音がトップクラスに前に飛びます。結構3368に近い感じがしますね。3368ほど耳に痛いハイが出ないので結果聞きやすい音になる感じで、個人的にはガッツのある音の欲しい時のお気に入りです。

SC-Spirit BLACK ZILK

代理店商品ページ/本国商品ページ

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 実はこのケーブル、音についてどう表現したものか困った感じなのですが、ここまでのケーブルの真ん中を取ったようなバランス感というか…良くも悪くも普通というか…そんな感じがします。歪みのノリの良さも含めてXXLに近い感じがしますが、XXLよりローミッドが控えめというか全体的に出っ張ったところがない感じがしますね…。 ちょっと有識者からの意見を元に改めて弾いてみた所、スタジオではオーバードライブでしか試せてなかったのでここまでわかりませんでしたが、どうもロー〜ローミッドが割とすっぱり切れているような気配があります。ディストーション等を使用して壁感のある音を出したい場合には不向きかもしれません。
 取り回しに関しては正直多分今回試した中でもトップクラスの柔らかさです。めちゃくちゃ柔らかい。あと見た目なのですが、写真だとわかりにくいんですが色はちょっとブラウンっぽい感じです。
SC-GARILEO 238

代理店商品ページ/本国商品ページ

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 ここまでと違って2芯ケーブルです。名目上はマイクケーブルの区分ですね。 マイクケーブルのリファレンス用におすすめされるほどなので、バランスの良い音という感じでどんな音作りをするにもあまり邪魔されたりはしないかなという印象です。sommer cableらしいものを、と言われるとこれが一番わかりやすいのかなとも思います。しなやかさはLLXに近い感じでしなやかではあるものの一番柔らかい部類の物よりは少ししっかりした感じです。ちなみに最近PLUSの方も試してみましたがシールド層の間にフィルムが入っている構成で、その分よりおとなしい音になっている気がしました。(あくまで個人的所感) 

SC-CLUB RED ZILK

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 2芯シールドケーブルで、シールド線の内側にカーボンのセミコンダクターが入っています。GARILEOと比べた場合、元気な音だと思います。特段癖があるとかではなく、ただ比較的にパワーのある音という感じ。後2芯ケーブルなのに前述のBLACK ZILK並に柔らかいです。取り回しは非常に良いといえます。色はREDと言っても真っ赤というよりワインレッドみたいな感じ。 ちなみにこちらのRED ZILK、色違いのBLACK ZILKが存在しています。紛らわしい話なのですが、BLACK ZILKは1芯の物(SC-Spirit〜)と2芯の物(SC-CLUB〜)が存在していて、2芯の方にBLACKとREDがある形だったり。

COLONEL INCREDIBLE 

代理店商品ページ/本国商品ページ

 

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 2芯シールドケーブルで、片側が芯線のみ、もう片方の芯線側に組編シールドというツイストペア構成になっています。楽器用のケーブルとしては少し珍しい気もしますね。これもかなり柔らかいです。そして音の方は、レンジが広い感じで、なおかつギターで美味しい辺りのローミッドがしっかりしてる感じがします。見た目が他であまり見ない感じのモスグリーンっぽい感じで僕はこれ好きですね。 
 こんな感じでざっくりと色々なSommer Cableの使用感などをレビューさせてもらいました。序盤でも一度触れましたが、オヤイデ電気さんがメートル単位での切り売りの取り寄せに対応していますので、お好みのものや気になる物がありましたら、ぜひ問い合わせてみてください。詳しくは
こちらを参照のこと。
 正直な所を言うと、ケーブル変えて云々って弾いてる人間にしかわからない事が多いですし、見た目も含めて好きなケーブル選んでもらえればな、って思うんですけどね。僕は取り回しの良さや丈夫さも含めてSommer Cableがおすすめですよ、と言う感じですね。 そんな具合で、これから使ってみたい人の参考になれば幸いです。

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Caroline Guitar Company / ICARUS V2.1

 こんにちは、あるいはこんばんは。
 今回はこちらのペダルのレビューをします。

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 こちら、Caroline Guitar CompanyというメーカーのICARUSというペダルです。

 まずCaroline Guitar Company(以下Carolineと表記)というメーカーについて軽く触れたいと思いますが、アメリカのコロンビア州のペダルメーカーです。このメーカーのペダルの特徴は、やや正方形に近い筐体と、ピクトグラムで表記されるコントロール、そして大半のペダルについている発振スイッチ(Havocスイッチ)です。今回のペダルは発振スイッチなしですが。

 すごく有名なブランドと言う感じではないんですが、時々メジャーで活躍してるバンドの方でも同ブランドのペダルを使ってる方がいますね。(例:アジカンのGotchさん→Kilobyte delay、ヒトリエ のwowakaさん→Wave Cannon MK2など)

 どのペダルも割とローファイ/オルタナティブな雰囲気に寄せた音作りがしやすいので、そういう感じの音が好きな人には筆者的におすすめのブランドだったりします。私自身新作がリリースされると結構な割合で買うお気に入りブランドでもあります。

 そんなお気に入りブランドの新作なのですが、V2.1と言うからには元になったペダルがあります。CarolineのICARUS Boostというペダルです。

 これはブランドの初期の頃のペダルで、2ノブのクリーンブースターでした(生産完了品)。ただ、今回のV2.1とは実質別のものと言ってもいいかもしれません。

 今回取り上げるICARUS V2.1はブランドの現行ラインナップにあるPARABOLA(トレモロ)やMETEORE(リバーブ)のプリアンプ部分を拡張して単体のドライブペダルに仕上げたもの、との事で...クリーンブースターというより、プリアンプ/オーバードライブという方が適切なペダルになっています。ちなみにクリッピングゲルマニウムとシリコンのハイブリッド構成だとか。

 おおよその説明を済ませた所で、具体的にコントロールなどの話に入ろうと思います。Carolineのペダルは前述の通り、コントロールの表示がピクトグラムのみの為、文字ベースでは説明しづらい事も多いのですが、このペダルに関してはあまりややこしい事はなくて、左からVol、Tone、Gain、ただそれだけです。

 ボリュームとゲインは両方上げると相当な音量が出るので、ゲインを上げてドライブさせるならボリュームはやや控えめに、ゲインを抑えてブースター的に使うならボリュームを上げていく感じにして、そこからトーンを調整するといい具合に鳴らせると思います。トーンはあまり広く効くタイプではないですが、過不足なく欲しい所を足し引きできる感じです。

 音に関してですが、明確な個性のあるペダルです。大枠ではオルタナティブな感じの音で、ゲインが上がっていくとガラッとしたアメリカンな感じのする歪み方をします。ローゲインで使うとBensonのPreampに似た雰囲気というか、低域の感じがちょっと似てる気がします。ゲインの多寡は置いといても大きめの音で鳴らす方が気持ちいいですね。大きめの音でコードを掻き鳴らすのが最高です。爆音出したいならフルテンでもいいかとは思いますが、音量が大きい為、鼓膜の保証が出来ないような気がします。

 アンプにこれ一個でラウドなロックをやるのもいいですし、他の歪みと合わせても良い働きをする、良質なプリアンプ/オーバードライブだと思います。個人的には買ってよかったなって思います。

 ただこのペダルの欠点と言っていいのかわかりませんが、生産台数が限定されていて、結構な希少品なのが問題でして...。日本に入ってきてるのも、聞いた話じゃ片手分くらいだとかそんな話がありまして...。もしどうしても欲しいなら海外のサイト(ebayとかReverbとか)探した方がいいかもしれないです。

 自分も行きつけのお店で入荷してなかったら多分買えてなかったと思うので...。個人的にはすごいおすすめのペダルですし、もし見つけたら是非試してみて欲しいです。

 それではまた次の記事でお会いしましょう。

BJFE / Aqua Marine Wonder Machine

 こんにちは、あるいはこんばんは。
 早速ですが今回のレビューはBJFEのペダルです。

 BJFEとは?という人もいると思いますので軽めに説明しますと、Bjorn Juhl(ビヨン・ユール)というスウェーデン出身のビルダーさんによるエフェクターブランドです。このBjorn Juhl氏、略されてBJFなどと呼ばれる事が多いのですが、多分現代のエフェクター界においては伝説級のビルダーでして。氏の設計したペダルが色んなブランド(Mad professorやBearfoot、One Control)から出ていて、誰しも一度くらいは氏の手掛けたペダルを見た事があるのではないでしょうか。特にHoneyBee ODとかその派生になるSweet Honey Overdriveとかが有名ですかね。

 そんなBJFEのペダルですが、Bjorn Juhl氏が多忙を極める上、ハンドメイドのエフェクターなので、生産数も多くなく、比較的流通数の多いモデルというのはありますが、基本的には希少です。自分も実機をお目にかかる機会がなかったわけではないですが、希少性などもあり、店頭で値段見てうひゃぁ...みたいな感じの価格なので手を出すことはありませんでした。

 ですが、なんと今回ご縁がありまして、かなり良心的な価格でBJFEのペダルを手にすることが出来ました。そうした理由で、このペダルのレビューをしようと思います。

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 このペダル、Aqua Marine Wonder Machineと言います(文字数が嵩むので以下AMWMと表記します)。Mad ProfessorのSky Blue Overdrive(以下SBOD)の原型の一つ、とも言われるペダルです。

 実は前オーナーの方が、同じAMWMの4k(4ノブ)モデルを手に入れて、こちらは放出するとのことで、僕が譲っていただいたのですが、こちらは5k(5ノブ)モデルです。

 ちなみにSky Blue Overdriveの原型とは言いましたが、音の説明の上ではあまり関係ない感じもありまして、ものすごく大きい括りで見ると、トランスペアレント系に近しいサウンドのように思います。ヴィンテージ感のあるトランスペアレント系といいますか...。

 ノブのコントロールはV、D、X、T、Zという5つありまして、VはVolume、DはDrive、TはSBODと同じならTextureでしょうか(もしくはTone、Trebleの可能性もありますが)。 Driveの範囲は絞り切ると音が出なくなり、上げていくと音量と歪み量が増えていきますが、最大まで上げても使いづらいことのないODらしい範囲、Volumeも結構幅が広く取られていて、最大まであげると結構大きくなります。使い方にもよりますが、自分は11時くらいでいいかなと思いました。(音量的にはVolumeとDrive両方10時くらいでオフ時の音量と体感で同じくらいかなという印象)

 Tノブは上げ切るとハイがかなり強く出ますが、それでも耳に極端に痛い音にならない、絶妙なチューニングでした。

 XとZに関しては何を示しているかは不明なのですが、Zがインプットインピーダンス周りの調整、Xはローミッド辺りの調整に関わっているようです。Zはかなり特徴的なコントロールで、インプットインピーダンスの調整に際してローエンドを中心に音全体を微調整するような動きをします。ただ、本当に微調整という感じでもあるのか、自分はいじってもそこまでよくわからない感じもありました...。(インピーダンス関係の調整のためか、前段にバッファ等が繋がっていると効果が感じにくい場合もあるそう)

 Xノブはギターの場合、実質ここがBassコントロールと言っていいような帯域を調整出来ます。ギターで美味しいローミッドを操れる感じです。個人的にはここを足していくとコンボアンプ的な箱鳴り感が付加される感じがしたので、うまく調整してあげると良さそうだと感じました。

 ちなみに4ノブモデルもオーナーの方のご厚意で少しだけ弾かせてもらったのですが、こちらの方はV、D、T、Bというノブ構成で、Bがローエンドのコントロールだったので、素直にVolume、Drive、Treble、Bassの構成だったようです。

 4ノブ、5ノブで音に関しては大きな違いは感じませんでしたが、全体的に4ノブの方が音作りがしやすい感じでより便利な印象がしましたね。

 総評すると、とにかく使いやすい、トランスペアレント系ODという感じなのですが、それでいて他にない雰囲気があったり、デッドポイントがないチューニングなど、評価が高いのも肯けるペダルだと思いました。もし機会があったら試してみて欲しいです。値段が相当にするので、是非買ってくださいとは言いづらいですけども、触れてどういうものか知るだけでも価値はあるかなと思います。

 

おまけ

 後から知ったのですが、どうやらワンオフ品や記念モデルに次いで希少なモデルらしいです。BJFEも含めレアなペダルに詳しい、CULTの細川さんによる記述では、現在ほとんど流通がなく、数年に1台取引があるかどうか...らしいとか。(しかも新品だと10万近い値が付くらしい)


追記:Pedal shop CULTさんにて過去扱われた中古のAMWMの4kは、私が弾かせてもらった個体にあったBノブがなく、代わりにRノブがあったようです。どうも内容的には5kやSBODのZノブと同じような効果のコントロールだったようですね...。(そちらはまだ商品ページ自体残ってるのでそちらを参照ください)

Chase Bliss Audio / CXM1978

  こんにちは。
 3回目にして早くも発売直後のとんでもないペダルをレビューする事になりました。
 Chase Bliss Audioのモーターフェーダー付きリバーブ、CXM1978のレビューです。

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 今回はかなり長い内容の為、目次付きでお送りします。

CXM1978って一体どんなペダルなのか

 CXM1978は、Chase Bliss Audioが以前NAMM Showで発表したモーターフェーダーを搭載するAutomatoneシリーズの2台目になる、Merisとコラボで開発されたリバーブペダルです。(Automatoneシリーズの1台目は6月頃に発売されたBenson Ampとのコラボで製作されたPreamp mkⅡというペダルになります)
 "1978"でピンと来る方もいらっしゃるかと思いますが、Lexiconのデジタルリバーブがコンセプトにあるようです。このペダルの特徴は言うまでもなくペダルの上半分に6つ並んだモーターフェーダーの存在で、これがプリセットなどを切り替えると自動的に保存されたパラメーターに応じて動いてくれます。エクスプレッションペダルを繋いで、操作するパラメータを設定するとペダルの操作に応じて追従もしてくれます。
 ちょっとプリセット動かしただけの動画を撮っていますので参考までにどうぞ。

www.youtube.com
 こんな具合にプリセットを動かすと自動でカシャっと動いてくれます。これだけでも割と楽しいですね。


 ちなみに人によっては大事な要素になるサイズ感ですが、かなり大きいです。そして重い。

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  比較対象としてBOSSのエクスプレッションペダルを横に置いてみましたが、縦幅が1個分弱、横幅はBOSSのエクスプレッション2個分くらいはあります。重量も、公式のページに1000gと書いてあるので、これ単体で1kgです...。モーターフェーダー付いてるから仕方ないですけど非常に重たいですね。

ペダルの操作に関して

 ここからは主に操作面に関して触れていきます。各ノブ/スイッチに関して書いた結果、雑な説明書みたいになってしまったので斜め読みしてもらうくらいで良いかもしれないです。随分と長くなってます。

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 まず入出力ですが、上の写真の様に、左右(LR)のインプット/アウトプットとEXP端子、AUX端子、MIDIのイン/アウトと9V DCの入力ですね。電源は9V 500mAと現行の単体ペダル(マルチ除く)で見ると最大級に消費電流量が大きいのでパワーサプライを使う場合は注意が必要そうです。
 入出力はラインレベルも対応しているので、シンセ等でも使えます。加えて対応するケーブルを使えばバランス接続にも対応しています。つまりアンバランス/バランス両接続に対応しています。AUX端子は、現時点の日本語マニュアルには記載がないようで、本体同梱の英語マニュアルを見た限りでは、MerisのPreset Switchなどを使うための端子らしいです。(持ってないので未検証なのでこの辺りは試せる人がいたら情報が欲しい所です) 

 実際に操作できるパラメーターは、以下の写真のように、フェーダーで操作できる、PRE-DLY、MIX、TREBLE、CROSS、MIDS、BASSの6つと、ボタンで切り替えるJUMP、TYPE、DIFFUSION、TANK MOD、CLOCKの5つ。あとフットスイッチがBYPASS(長押しでSAVE)、PRESET(長押しでBANK切り替え)の二つです。

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 まずフェーダーでコントロール出来る6つについてですが、これが普通のリバーブと比較した際、独特な動きをします。おそらく一般的なリバーブ系のペダルのイメージで動かすと初めは戸惑うかと思います。 
 戸惑う原因になるのが、左側4つのフェーダー(BASS、MIDS、CROSS、TREBLE)は全てリバーブの長さ(ディケイ)に関与するパラメーターであることです。もう少し踏み込んだ説明をすると、CROSSのフェーダーでクロスオーバーフリケンシー(どの周波数帯でMIDSとBASSを切り分けるのか)を設定し、その周波数より上の帯域のディケイをMIDSで、下の帯域のディケイをBASSで設定する、という形になっています。なお、CROSSの周波数レンジはマニュアルを参照した所、0Hz〜1700Hzとなっています。つまり0Hz〜CROSSで指定した所までのディケイをBASSで、そこから1700HzまでのディケイをMIDSで調整出来ると言うことです。
 さらに一般的なリバーブと全く違う作用をするのがTREBLEで、このパラメータは音の吸収を変化させることで音の反射をダーク/ブライトにする、という働きをします。結果、TREBLEを最小にすると、MIDSやBASSでディケイを長くしていても吸収が大きくなった結果としてディケイが短くなる、というような挙動をします。
 一般的なリバーブのトーンコントロールのように見えて、実はディケイへと作用してくる、ギター用のペダルではほとんど見たことがないタイプのコントロールになっています。

 続いてMIXフェーダーですが、これは定番のリバーブとドライのミックスバランスを決めるコントロールです。ここは一般的なリバーブペダルと同様のものですね。
 最後に一番右のPRE-DLYフェーダーですが、リバーブペダルにはよくあるリバーブがドライ音に追従するまでの時間を設定するパラメータなのですが、ここはフェーダーの下部にあるCLOCKボタンの影響を受けます。設定できるレンジ(反応するまでの長さの最大値)がCLOCKボタンの設定に応じて変化します。細かい数値とかに関しては割愛しますが、CLOCKをHIFIにすると短め、LOFIにするとある程度長く、と言う感じのよう。

 続いてフェーダー下部の5つのボタンについて左側から順に触れていきます。このボタンですが、対応パラメータがどの設定になっているかはランプの色で視覚的に分かるのでトグルとかより扱いやすい気がします。ちなみに押していくと無点灯→青→赤→無点灯で切り替わるようになってます。 
 まず、JUMP。これはAUTOMATONEシリーズ共通のボタンなのですが、プリセットの切り替えをジャンプするためのものです。OFFの状態だと、PRESETスイッチを踏むと0→1→2...9→0プリセットが順に動くのですが、ここがONになっていると、次の移動先を、0番もしくは5番に指定できます。これだけだと何の事だか、と思いますが、これを各プリセットで指定出来るのです。
 そうすると何が出来るのか、と言う事なのですが、例えば0→1→2とプリセットで移動して、2番のプリセットでJUMPを赤に設定してあげると、次にプリセットスイッチを踏むと、5番に飛べるのです。5番プリセットに0番へのJUMP(青)が指定してあると、0→1→2→5→0...というループを組んで使わないプリセットを飛ばしてあげたり、もうちょっと複雑な例だと、1→2→0→5→6→7→0、みたいな動き方も出来たりします。ここにMIDIでプリセットのチェンジなんかも絡めるとさらに色々と出来るんではないかと。(筆者はペダルのMIDIコントロールという奴が長らくイマイチぴんとこないデジタル音痴なのでMIDI周りの解説は詳しい人にお任せしたい所存ですが。)

 続いて左から二つ目のTYPEスイッチですが、ここはリバーブのタイプ切り替えですね。ROOM、PLATE、HALLの3モードがあります。HALLに設定した上で、後述のDIFFUSIONスイッチをLOWにすると隠しモードが使えるみたいです。

 真ん中のDIFFUSIONスイッチは、PRE-DLYフェーダーに関わってきますが、最初の滲み方を決めるスイッチです。LOWは滲みなし(TYPEがHALLの場合は隠しアルゴリズムに切り替わる)、MEDはソフトアタック、HIGHはプリディレイが再生成されて無限に拡散して滲むような音になります。ここをHIGHにして、後述のCLOCKスイッチをLOFIにしてPRE-DLYを高めにするとディレイ的な使い方も出来ます。

 右から二番目のTANK MODスイッチは、リバーブタンク内での揺れ方を設定するスイッチです。すごくざっくり言うとLOW:わずかに揺れる、MED:コーラス的な揺れ、HIGH:速くて浅めのロータリースピーカー的な揺れ、という感じ。 

最後にCLOCKスイッチですが、最近この手のデジタルペダルに多い感じではあるんですが、音の解像度が変わります(フェーダーの所で前述したように、付随してPRE-DLYのレンジも変わります)。HIFIにすると現代的なローノイズなリバーブに、STANDARDにすると1978年風のサウンドに。LOFIにすると、ざらついた質感のリバーブになります。僕はLOFIモードが一番好きでした。

このような各種パラメーターを組み合わせ、気に入った音を作る、という感じです。

実際に弾いてみてどうなのか(総評)

 操作の部分の説明などを見て、「かなり色々な音が作れて万能なリバーブなのでは」と思われる方もいるかと思います。
 それに関しては明確に「違う」と断言します。ペダル名にもある通り、基本的には70年代末〜80年代のデジタルリバーブの音が大前提にあって、それに加えてより現代的でローノイズなデジタルリバーブや、ローファイなリバーブも扱えると言うもので、万能なタイプと言うよりは高品位なデジタルリバーブをパッと作れる、切り替えられるというタイプのペダルです。
 音については「シンセでもギターでも使えて高品位な80年代前後風のデジタルリバーブサウンドが欲しい」という人向けのものに位置付けする感じだと思います。 

 そういう訳で、strymonのNight skyやBig Sky、empress effectsのReverbなどとは役割的には重複してこないと思いますし、互いに代用も出来ないと思います。

 操作面ではモーターフェーダーがとにかく目立ちますが、実の所これがすごく操作性が良くて、加えて今の設定が一見してすぐ把握できる、機能的に良いデザインです。
 某メーカーのペダルみたいにどこかのスイッチを押しながらノブを回すと2ndパラメーターが操作出来て...とかそう言うのもないので比較的シンプルな部類かと思います。あまり迷わずに使える感じで、その辺りはラック機材っぽい雰囲気もあるかもしれませんね。

 欠点についても述べますが、すごく身も蓋もないことを言うと(値段が)高い、(本体が)重い大きい。全てモーターフェーダーの採用に起因する欠点なので、モーターフェーダーの採用に良い面もあるんですが、デメリットも大きいと言うのを如実に示している感じがします。なにせ新品価格は税込10万8900円ですからね...。
 音はめちゃくちゃ良いんで、半額くらいでもう少しボードに入れやすいサイズだったら買う人それなりにいそうなんですが...。 

 そんな訳で、総合してみても全く万人向けではないと思うんですけど、あんまりドンピシャでこの80年代デジタルリバーブの音がハイクオリティに出てくるリバーブペダル、多くはないので、興味ある人は試してみて欲しいなと思います。

 それでは、また次回の記事でお会いしましょう。