エフェクターの話をしよう

ラッコ(twitter ID:rakko_lau)がエフェクターのレビューやらをするブログです。コメント等はお気軽にどうぞ。

エフェクターと電源に関する色々の話

こんにちは。
今回はレビューではなく、コラムに近い内容です。
 
 ちょうど先日発売されたエフェクターブックのVol.51がパワーサプライ特集でしたし、この機会にエフェクターと電源に関してを考えてみよう、というような趣旨の記事になります。
 とは言っても、個人のブログでものすごく深堀りしてめちゃくちゃ長い内容をどうこうしようというものでもないので、もっと詳しい内容が知りたいという方はエフェクターブックのVol.51や、より深く学びたい人は高校物理の電気の部分に関する本を読んでみるのが良いかなと思います。
 
 また、私は専門家とかではないので、この記事を参考に何かをして故障しました、というような物に関しての責任は取る事が困難です。使用する電源ケーブルを自作するなどの作業に関してはテスターなどを用いた上で、自己責任でお願いします。後そういうのに神経質になる人や故障が怖い人はなるべく純正の付属品などを使ってください。
 

エフェクターと電源の関係性

 大前提としてエフェクター、電源がないと動きませんので必要不可欠なものである事は共通認識であるとは思うのですが、具体的に何がどう影響しているかというと大半の人はあまり意識していないのかなと思います。基本的に歪みペダルなどで使われる増幅素子などは、入力信号に反応して、電池やパワーサプライなどから「供給される電源を使って」増幅素子が生み出した新たな信号を出力するというプロセスを経ています。なので、電源にノイズが乗っていると必然、出力にノイズが乗るという事になったりします。
 
 そんな訳で、電源をちゃんとする、というのは結構重要な事になります。ちなみに最初に明言してしまいますが、電源由来のノイズが一番出ないのは電池駆動です。コンセント由来のノイズや、他の機器経由のノイズが乗らない分どうやってもパワーサプライよりはノイズが少ないです。「エフェクターは電池」派が根強く存在するのも、その辺りが理由の一つでしょう。私はどうにも都度の交換や残量管理が面倒だと思ってしまうタイプなので、パワーサプライを使っていますがこの辺はそれぞれの考え方によるかとも思います。
 もし電池は面倒だがノイズも抑えたい時は、最近はモバイルバッテリーを供給源に使えるものや充電池式のパワーサプライなどもあるので、そちらを検討してみるのも良いかもしれないです。ただスマホのバッテリーなどと同様、充電池の宿命とも言える経年劣化等による容量の低下などが起きるので、ある程度の頻度での買い替えが必須になるというコスト的な問題があったりはします。ただこれは何をどう使っても経年による故障とかがゼロになる事はないので、買い替え頻度などが他と比べて許容出来る範囲かどうかを基準に考えるのが良いのではないかと思います。
 余談ですが、先日レビューしたHumangearのペダルの説明書に"電池(アルカリかマンガンか)によっても音が変わる"というような記載があったりしたので、その辺りも掘り始めると深い沼のような気はしますね。
 

エフェクターを扱う上で注意すべき事

 基本的にプラグの規格や極性を確認した上で扱う事が絶対だと思います。その辺りを疎かにするとペダルやパワーサプライを壊す事に繋がるので、よく確認した上で使用しましょう。  特に分岐ケーブルを使う人は、余った端子にはカバーを付けておくようにしましょう。余った端子が金属部などに接触するとショートして、場合によっては火花が飛んだりして危険です。機器を壊す危険もあるので端子が余る場合には注意すべきポイントだと思います。
 
 安全面とは別の観点で、ノイズが気になる人はグラウンドループなどを確認した方がいいのですが、ここに関してはかなり複雑と言いますか、ある程度ボードを組んだりの経験を積まないと、具体的にどうすると抑えられるのかという辺りが掴みにくい部分であったりもする様に思います。自分も未だに論理立てて説明できない領域だったりします。
 個人的にはこの辺りを深く理解したい方は数多くのプロミュージシャンのシステム構築などをされてきたFree The Tone代表の林 幸宏さんが書かれた「ギタリストとベーシストのためのシステム構築マニュアル」という本を読んでみる事をお勧めします。ペダルボード構築における知識の入口にいいと思います。(Kindle Unlimitedの会員だと読み放題対象になっている為、0円で読めるみたいです。)
 

実際に筆者はどうしているのか

 こんな話をしている筆者はどういう感じでやってるの?という疑問もあるかと思いますので、実際にざっくりと紹介したいと思います。写真などは部屋の汚さが出てしまうので添えられないのですが...。
 
 まず、壁のコンセントからPC周りの機材を繋ぐタップと、エフェクターボードや部屋でちょっと音を出す用のミニアンプ(BOSSのKATANA-MINI)などに電源を供給するタップとの2つに分けて繋いでいます。単品のエフェクター試したりするときはそこのタップからパワーサプライに繋いで、という感じですね。後、自室のテレビや空調関連(空気清浄機とか)は別の壁コンセントからにしています。外部が原因のノイズが出やすいとしたらその辺りなので。
 
 実の所、タップや電源ケーブルも変えれば通電部が変わるのでそれなりに音に影響したりしますが、この辺りは出来るだけ気をつける程度でいいとも思います。あんまりタコ足配線した先で繋ぐのは安全面でもオススメしませんが、普通に生活してると他の家電とコンセントの取り合いになる事もありますし、あまり無理に分離しようとすると大変だと思うので、ノイズの出やすい機器(テレビとか冷蔵庫とか電子レンジ)と同じコンセントを共用しないのを意識するくらいでいいかと。後はタップの最大ワット数とかの定格を守るくらいでしょうか。
 
 使用しているパワーサプライは、エフェクターボード用はStrymonのZuma R300とOjaiで組んでいて、バラで繋ぐときとかはボードに組んでない余ってる適当なパワーサプライ(VitoosのDC8とかVital AudioのVA-08 mk2とか)を使う事が多いです。自分の手持ちにデジタル系のペダルも結構あるので、大きめの出力が用意されてる物を選ぶ事が多いです。
 DCケーブルはオヤイデのDC-3398シリーズを使う事が多いです。普通のパワーサプライ付属品などに比べると音がブライトになるので、空間系とかのペダルに使うと音の濁りとかが減っていい感じになるように思います。歪みの場合はまたちょっと違いますが、この辺の変化こそ好みの問題になるので、探求してみたい人は色々市販品とかでも試してみて欲しいと思います。結構バカに出来ない変化をしたりしますので。
 自分の場合、所によっては長さの都合などで自作品や人に作ってもらった物も使っていますが、自作ケーブルに関しては自己責任で使うべきものなので、誰にでもおすすめする事はしません。作れたら必要な場所にピッタリの長さで用意できるので便利ではあるし、線を変えると音の変化は確実に発生するので好みの音を追求したい方は試してみてもいいと思いますが、どうしても故障などのリスクがついてくるので、万人にオススメ出来るとは言い難いので。

 大体筆者の環境は上記のような感じです。必要に応じて長さとか決めて自作する人間なので市販品のみ使う場合には参考にならないかなとは思うのですが...。

 後すごく余談の様な話になりますが、デジタル系の歪みエフェクターとアナログエフェクターの電源を混在させるのはあまりお勧めできません。実体験ですが、StrymonのRiversideというオーバードライブを使っていた時期に9V DCの各口がアイソレートされてない電源(確か当時使ってたのはFree the ToneのPT-1D)で電源供給したら、他の歪み(アナログペダル)にも電源供給していた結果、ノイズがかなり目立ったと言うことがありました。最終的にRiversideだけPT-1Dのコンセントからアダプター経由で電源取ることにして解決した事があります。
 ペダル同士の相性とかもあるとは思いますが、デジタル系の歪みを使う場合は特に注意した方がいいかと思います。経験上、デジタル空間系とアナログ歪みを混在させる場合より影響が大きい気がしています。
 
...と、いう感じでざっくりとエフェクターと電源に関する話をコラム的に書いてみたのですが、いかがだったでしょうか。正直実験的な記事でもあるので、参考になるかどうかもわからないですし、次弾の記事を書けるかどうかもわからないのですが...。もし誰かの参考になったなら幸いです。また次のレビューでお会いしましょう。

 

付録:エフェクターにまつわる電気関連の用語について

多分エフェクター触ったりし始めてから、調べると専門用語っぽい感じのものが一気に出てきてよくわからない、という人も多いかと思うので、頻出のものだけざっくりとした説明をしようかと思います。ここにない物やより詳しい事が知りたい人は調べてみてください。
 

・定格電圧

 その機器を連続して安全に使用できる電圧(V)の事。直流(DC)、交流(AC)などで直流同士、交流同士でそれぞれの機器に決められた電圧(V)量(例:9Vとか12V)と一致していないといけないもの。エフェクター側にDC9VとあればDC9Vのアダプターを使う必要があるという事。9〜18Vのような表記ならその間の値は許容されるが、下回ると正常に動作しなくなる場合がある。また、上回った場合もすぐ壊れるとも限らないが、内部の部品の耐圧を超える電圧が流れた場合は部品が壊れるなどする。有名なところで、ケンタウロスのようにチャージポンプICを使った昇圧回路が搭載されたものは耐圧がシビアな事が多いので、書いてある電圧を守るように。過電圧を入れると大体の場合、一発でアウト。
 

・消費電流と電流容量

 消費電流はその機器を動かすのに必要な電流(A)の事。エフェクターに表記されている場合、大体電源プラグの口付近に「〜V/〜mA」などと書いてある事が多い(例:9V/300mAなど)。大きいものだとデジタル系のペダルで500mAの物などが存在する。一方で供給する側のアダプターやパワーサプライに書いてあるものは電流容量と言って、その電源ないしその端子から安定して供給できる電流の最大値になる。基本的に消費電流より大きい電流容量の電源を使うのが原則。
 

・絶縁(アイソレーション

 ここでの絶縁は、電気用語としてのものなので、一般的なゴムなどによる絶縁とは意味が異なる。信号やエネルギーは伝達されるが、電気の経路が存在しない、ないし導体が物理的に分離している事を指す。中でも電磁誘導を用いるトランスや、電気を光に変換して伝えるフォトカブラは理想に近い絶縁方式とされていて、より高度な絶縁として区別されていたりする。
 大部分のパワーサプライなどにおけるアイソレートはもう少し簡素な手法を用いていて、大体が蓄電工程の内部に絶縁体を使用しているコンデンサによるものである。この場合は厳密には若干の漏れ電流が発生する事がある為、完璧な絶縁とは言いにくい部分もある。とは言っても、後述するグラウンド・ループなどには十分有効でもあるので、絶縁として公言するメーカーもあったり。パワーサプライの場合は端子同士が絶縁されていればノイズや電気的な突発事故の対策になる、くらいの捉え方でも良いかと思われる。
 

・極性

 確か理科の授業で触れる話だったと思うが、直流はプラスからマイナスに電気が流れるので、直流のプラグ(DCプラグ)にも必ずプラスとマイナスの極性がある。そして抜き差しする端子同士でそれらを一致させる必要がある。エフェクターの場合センターマイナスもしくはセンタープラスがあり、同じ端子でもバレルの外周と内穴(センターピン)、モノラルジャックタイプなら先端側と根本側で極性が分かれて、絶縁されていないとならない。(絶縁されてないとショートしているという事なので、最悪の場合は過電流が流れて機器が壊れてしまう)
 最近のエフェクターはほとんどがセンターマイナスの仕様だが、古いペダル(特にトレブルブースターやファズ)の中にセンタープラスの仕様になっているものがある。こうしたペダルを使う場合、電池を使うか、独立型(アイソレートタイプ)のパワーサプライで極性反転ケーブルで接続して使うか、アダプター単位で電源を分けるかする必要がある。(分岐ケーブルや独立型でないパワーサプライ内でセンタープラスとセンターマイナスのペダルの混在をすると、正常に動作しない場合が多い為。たまに極性反転ケーブル挟むだけで動くものもあるが推奨はされない。)
 

・グラウンドとグラウンド・ループ

 ノイズ対策などの話になると頻出する単語。グラウンド(GND)は「回路上の電位(電圧)を安定させる為の接地、または接地への経路」の事を指す。接地と言っても、感電防止のアースとは用途的に違う意味である。電流というのは始点から流れてどこかで止まるものではなく、流れ続けるものなので、機器において使いきれなかった電力は戻っていくようになっている。なのでこうした機器は、電気の戻る経路が渋滞しないような逃げ道を作っておく事で回路内の電位を基準内に保つという構造をしている。交流の場合は通常電気の流れない側がグラウンドになって勝手に壁のコンセントに戻っていくので問題ないのだが、直流の場合は機器のシャーシや金属パーツに接地(フレームグラウンドといったりする)しないと回路自体がうまく動作しない場合も多い。電気を扱う機器はほぼ例外なくグラウンドが存在していて、それがDCケーブルやオーディオ信号の経路、さらにはシャーシ同士の接触などによって巨大な経路の網となってしまう場合がある。グラウンドは広く流れるほど電位を安定させる力が働くので必ずしも悪い事ではないが、オーディオにおいては不都合な様々なノイズがグラウンド経由で広がってしまう為忌避される傾向にある。(このノイズが広がってしまうグラウンドの輪っかの部分をグラウンド・ループと呼ぶ)
 グラウンド・ループは空中を伝播する誘導ノイズもアンテナのように拾う性質があるので、複数の機器を同時に使う場合、各機器のグラウンドを絶縁するなどの形で各機器内に留める対策(これをグラウンドリフトと呼んだりする)が必要になったりする場合がある。
 

・ボジティブグラウンド

 直流のグラウンドは一般的にマイナス極に落とす事がほとんどだが、ごくたまに回路や使う部材などの都合でプラス極に落とされている場合がある。これをポジティブグラウンドという。
 最近のペダルではあまり見られないが、時々AC/DCも極性(センタープラス/マイナス)も定格電圧や電流容量などが合致しているのに外部電源で起動できないエフェクターに遭遇する事がある。そうしたものの原因がこれである。ポジティブグラウンドの機器とネガティブグラウンドの機器(いわゆる一般的なマイナスにグランドが落ちているもの)が同じグラウンド内で電源を共有するとショートするので、最悪の場合双方の機器に深刻なダメージが発生する事がある。加えてこの場合絶縁(アイソレート)されたパワーサプライなら問題ないかというと、必ずしもそうではなく、コンデンサなどによる絶縁は電流が流れる可能性がゼロではない為、100%安全とも言えないのである。その為、ポジティブグラウンドのペダルは単体の電源を使用する事が推奨される。
 

・リニア方式とスイッチング方式

 パワーサプライに限らず、コンバーター回路を用いて電気を変換する場合(ここでは主に交流から直流を取り出す工程を指す)、主に2つの方式がある。これが「リニア方式」と「スイッチング方式」である。
 リニア方式は別名トランス方式とかドロッパー方式とも呼ばれ、古くからある手法なのだが、回路がシンプルな事と条件はあるが比較的ノイズが少ない事でオーディオ方面では有利とされてきたが、欠点として機器が巨大で重くなる事、発熱が大きい為エネルギー効率が悪いといった点が挙がる。代表例としてはVooDoo LabのPedal Power 2 Plusがこちらの方式を採用している。
 スイッチング方式は部品点数が多く回路が複雑になりやすい為コストがかかるが、小型化が容易な事と、高効率で大出力が取り出しやすいと言ったメリットがある。元々は特有のノイズがある事でオーディオの界隈では敬遠されてきた方式ではあるが、近年のノイズ対策の進歩などに伴い普及が進んでいて、最近エフェクター向けの小型なパワーサプライではこちらの方式が主流となっている。
 

・プラグ規格

 電源の入出力のプラグの規格は機器によって異なる事がある。近年のエフェクターの大半はセンターマイナスの2.1mmのバレルプラグだが、たまにセンタープラスのものがあったり、2.5mmプラグのものがいたり...。後はピンタイプのプラグ(イヤホンのジャックみたいなやつ、古いRATなどがこのタイプ)とかもある。2.5mmプラグを使用する物は多くはないが、Line6のHXのシリーズが採用している為最近見る事が増えた。普通のパワーサプライ付属のケーブルは刺さらないので注意が必要。