エフェクターの話をしよう

ラッコ(twitter ID:rakko_lau)がエフェクターのレビューやらをするブログです。コメント等はお気軽にどうぞ。

Umbrella Company / Mayonaise Fuzz

 ご無沙汰しております。
 長らく筆が進まなかったり忙しかったりで、新しい記事を出さないままでしたが、久々に少しまとまった時間が取れそうなので、年内のうちに積み上がってる下書きをちょっとずつ仕上げて、順に出していきたいなと思っています。

 そんな訳で久々の記事なのですが、今回取り上げるのは今週発売されたばかりのUmbrella CompanyのMayonaise Fuzzです。ビッグマフを源流とするファズ・ディストーションです。

Mayonaise Fuzz 名前の通りペダルの上半分はマヨネーズのイラストが描かれています。


 コントロールはVOLUME、TONE、SUSTAINの3つのノブと、DOPING、1979の2つのトグルスイッチ。そして内部のジャンパを切り替える事で裏モードに切り替えられます。
 VOLUMEは音量設定なので割愛しますが、SUSTAINはかなり幅が広いです。結構ローゲインな所から、ディストーション的な領域を経て、最大に近付くとファズの雰囲気が強くなっていきます。
 TONEは一般的なマフ系と同様の12時を中心に右に回すと高域が、左に回すと低域が強調される仕様です。

 DOPINGスイッチはビッグマフ式のトーンの仕様上、スクープされてしまうミッドの帯域を補うような働きのスイッチです。オフの時はTONEが一般的なビッグマフと近い効き方をします。オンにすると、ミッドを強烈にプッシュして音が前に出るような感じになります。トーンの効き方自体も少し変化するようで、通常のマフでは使うことが難しいTONEが最小や最大の状態でもかっこいい音が出ます。かなり使える幅が拡張される感じですね。

 1979スイッチは説明書によると、「一部コンデンサをカットしてフルレンジブーストを追加する」と言う事なんですが、1979っていうとマフにトーンバイパススイッチが搭載された頃だったと思うので、それを意識したスイッチなんでしょうかね。オンにすると、オリジナルのマフにあった独特の篭り感が解消される感じと言いますか...。高域の潰れ具合が変化するのと、ギターのボリュームへの反応性などが良くなります。特にSUSTAINを低めに設定した時に効果的で、ギターのボリュームでクランチくらいのところからファジーディストーションサウンドくらいまでコントロール出来たりします。

 実際に触ってみた印象だと、通常モードはSUSTAINがどのポジションでもマフ系として考えるとだいぶ抜けや分離感がいい印象です。そのお陰で使いやすいですし、どんなジャンルの音楽でも対応できそうな懐の広さを感じます。
 "サウンドの張り出しと突き抜け感にこだわり、アンサンブルの中でドライブが「飛んでくる」感覚を意識して作られた"というのも納得の仕上がりだと思います。

  
 そして、内部のジャンパを切り替える事で使用できる裏モードについて。

ペダル内部、右下にあるジャンパを切り替えることで、通常モードと裏モードを切り替え可能。


 通常モードは音抜けのいいスタンダードなマフ系サウンドといった感じですが、裏モードにすると、通常モードとは比較にならないほどのローが追加されます。シビルウォー期の特定の個体が元になっているらしいのですが、めちゃくちゃイカつい低域が壁のように出てきます。
 ただ、思っているよりグシャッと潰れる感じは少なくて、各弦の分離感もある程度維持されてる感じです。とは言え、裏モードでトグルスイッチ両方オフだと流石にちょっと扱いづらさも感じる部分はありますね。
 それと地味な所ですが、通常モードはエフェクトオンのLEDが赤なのですが、裏モードにするとLEDが青になります。現在どちらになってるかが分かりやすくてありがたい仕様ですね。

 参考までにX(旧Twitter)にあげた友人に弾いてもらった動画を載せておきます。

裏モードにするとロシアンマフの音になる(ローめっちゃ出る) pic.twitter.com/wWC5R41jai

— ラッコ(rakko)🦦 (@rakko_lau) 2023年10月20日

 


 総評としては、非常に守備範囲が広く、使えるポイントの多いペダルだなと思います。どんなジャンルにも対応出来ると思いますし、使い道が限定される感じもあまりしないと思います。
 それでいてあまり音作りで迷う事が少ない操作性も秀逸だと思います。守備範囲を広く取ったペダルってノブが増えたりしがちで、しかもそのノブが相互作用するタイプだったりすると音作りで迷子になりやすかったり...とかそういうこともあるんですが、Mayonaise Fuzzはそこをノブ3つと2つのトグルという形で選択肢をある程度絞ってくれているので、目当ての音を探しやすい印象がありますね。少なすぎず、多すぎない丁度良い塩梅じゃないかと。

 個人的には25000円+税という価格でこのクオリティの物が出てきたの、昨今のエフェクター業界で見てもかなりインパクトのある出来事だと思います。かなりオススメです。

 

 そんな感じで、久々の更新でした。また次の記事でお会いしましょう。

 次こそはあまり期間を空けずに更新出来たらとは思っておりますが、実際どうなるかはなんとも言えないのが心苦しい所ですが...。 

おまけのような話ですが、裏蓋には海外の食品成分表示みたいなスタイルのシールが貼られています。こういう遊び心も楽しくていいですね。


 ※余談ですが、Skreddy PedalsにもMayonaiseってファズが(その小型版のMayoも)ラインナップされてまして、そちらもマフ系のペダルなんですよね...。なんか名前の由来的なところで関係あったりするのでしょうかね...?
 

 余談の追記になるのですが、Mayonaiseの由来はThe Smashing Pumpkinsではないか、と知人から教えてもらいました。「Siamese Dream」というアルバムに同名の曲があるそうで...。(Skreddyのペダルもそこから取ってるらしい) 
 1979スイッチも「Mellon Collie and the Infinite Sadness」に1979というタイトルの楽曲があるとの事。自分は全然スマパン詳しくないので気付きませんでしたが、ファンならニヤリとするネーミングなのかもしれませんね。

ちょっとしたご報告

 先日...というにはそこそこ前になってしまいますが、2023年3月30日に発売になりました、シンコーミュージックさんから出ています「THE EFFECTOR BOOK Vol.59」に、機材協力という形で名前が載っております。

 知己の編集部の方より、所有しているMarshallのGuv'norの緑基板の個体を貸してもらえないかと問い合わせを頂いた...という経緯で協力の方をしております。

 

 今回は今年リイシューが発売されたMarshallの各種ペダルが特集されていて色々面白いので、良かったら買って読んでみてください。

 

www.shinko-music.co.jp

2022年 買ってよかったペダル

 こんばんは、去年もやりましたが今年も昨年中に買ったペダルで良かったものをピックアップしてみようかと思います。昨年同様、ペダルの詳細に関しては今後個別の記事として公開するつもりのものもあるので、個別記事よりあっさりとした紹介になりますがご容赦ください。

 ...といいますか、締切がない趣味ブログなのもあって、書き始めるまでが長い上に物によっては書き始めてからが大変になる場合もあって、書こうと思ってるものが溜まる一方なんですよね。今年はもう少し頑張って更新ペース上げれたら...いいなと思っていますが、それも確約はできそうにありません...。

 

 それでは本題の買ってよかったと思ったものに触れていこうと思います。2022年に買ったペダル数えたら全部で60台くらいあったんですよね...。しかもアンプと竿も買ってた..。今年はもう少し厳選して控えめに行きたいなって気持ちになりました(言うだけにならないことを祈りたい)。

 

1. Erectronic Audio Expeliments(EAE)/ Limelight V2

 Erectronic Audio Expeliments(以下EAE)のオーバードライブ。基本路線としてはマーシャルのブルースブレイカー系のODの前段にブースターが付いていて、一台で結構幅広く使えるいいペダルです。EAEのペダルは昨年終盤にアンブレラカンパニーさんが取扱開始して国内に入ってきてるんですが、こちらのモデルについてはまだ日本国内に入ってきてないので、現状海外から買うしかないのが難点。これは昨年個別記事を書いたので詳細はそちらをどうぞ。

 

2. Z.Vex / Box of rock

 Reverb.comにて見つけた、シリアル10番のBox of rock。所詮Box of rockでしょ、と甘く見るなかれ、めちゃくちゃいい音がするんですよ...。これは本当に買って良かった。

 参考までにTwitterでクイズ的にこのペダルはなんでしょう、をした時の動画があるので、そちらを貼っておきます。(これで鳴らしてるやつがこのBox of rockです)

 

 

3. JHS / Morning glory V1 (Throwback)

 JHSの定番OD、Morning gloryのV1の復刻品です。具体的にいうとV1自体はJHSがオリジナルペダルを作り始めた当初に100台程度作られたもので、それ以降色々な改良が加えられて、現在ではV4になってるのですが、そのV1を特別に復刻したものになります。現行のV4と比べた場合、音が上から下までバランス良く出てくれる印象で、使いやすいと思っています。

 

4. CULT / Ray

 PEDALSHOP CULTがついにオリジナルペダルを出した、という衝撃の一作。多分2020年代の傑作オーバードライブの一角に入ってくるのではないかと思います。筐体に超々ジュラルミンを使用したオリジナルケースを採用していたり、使用する素子もエフェクターだと普段なかなか使われない物を使用していたりと、CULTのオーナーがこだわりにこだわり抜いたプロダクトになってます。音もトランスペアレントなようでいてこのペダルだけの雰囲気があるといいますか...歪ませてもクリアに聞こえるんだけどちゃんと歪むっていう不思議なペダルです。難点があるとすれば凝った材料、仕様の為お値段が張ることでしょうか...。

 

5. KarDiaN / CHLOROFORM "KYOMURASAKI VER."


 KarDiaNの傑作OD、CHLOROFORMの特別仕様。関西のワタナベ楽器の75周年に際したコラボレーションで製作された物で、通常と違いCHLOROFORMのブースターとしての側面に焦点を当てて、レンジマスターをリファレンスにして回路設計とパーツを大幅に変えた物になっています。本当にレンジマスターっぽい高域のチリチリ感とかもあって、それでいてレンジマスターのような扱いづらさもほとんど感じられない絶妙な調整になっていてすごく良いです。

 

6. Phantom fx / Sabbath "Black Gaze"

 既に記事を書いてあるので詳細はそちらを見てほしい所ですが、多分昨年買ったファズの中では一番だったのではないかと思います。扱いは難しいですが、1ノブでシンプルにカッコいい音が出せる最高のファズです。

 

7. Lovepedal / Black Beauty Balanced 05'

 LovepedalがNOSのゲルマニウムトランジスタを使って不定期に作っているファズの05年生産品...なんですが、自分が手に入れた個体はどうも所有者がAnalogmanにModに出してトゥルーバイパス化とLEDとDCジャックの追加がされた物らしく。結果的に音も悪くないし使い勝手の面でも不便がなくていい感じです。なんかネットを調べた所では11年生産のものの写真ではDCジャックとかLEDついてるんでそのくらいの時期から標準搭載になったんでしょうかね...?

 ペダル自体の特徴としては真ん中のノブがトーンではなく、ゲルマ/シリコンのブレンドみたいな働きをしていて、ここのセッティングによってかなり音のキャラクターが変わる、という所でしょうか。

 

8. Fulltone / OCD V1.1

 2021年買って良かったものの記事でV1.2を挙げているんですが、昨年Fulltoneの廃業が発表された直後くらいにどうにか見つけて手に入れたV1.1、V1.2とも違ってこれまた良いペダルでした。甲乙つけ難いんですが、ボリュームへの反応性を取るなら1.1、バランスの良さなら1.2かなという印象です。この2つだけを比べるなら好みによるかなと思いました。申し訳ないがOCD自体が好きなので...。

 

9. BLACKSKYCRAFT / Unuseal E.A.S

 現状Instagramで直接オーダーするか、中古をReverbなどで探すしかない、個人ビルダー製作のビットクラッシュリバーブ。明確にこれじゃないと作れない音があるタイプのペダルで、去年手に入れたリバーブの中ではこれが一番遊んでて楽しかったですね。

 

10. Vongon × Land Devices / Onset

 VongonとLand Devicesのコラボによるオートスウェルペダル。現状流通してるオートスウェルペダルの中では多分反応の良さや音の減衰の滑らかさとかそういった部分が一歩抜きん出てる感じで、この手のペダルとしては非常にいいです。バイオリン奏法っぽいこととかやりたい人にも良さそう。

 

 こんな感じで10台ほど上げてみましたがいかがでしたでしょうか。並べてみたら、現在在庫切れで再入荷がだいぶ先だったり、限定品だったり、レア物だったり生産終了品だったり、国内に流通がない物だったり...と全くおすすめしにくいラインナップになってしまいましたが...。

 余談として、現時点での入手が難しくない物で、個人的におすすめできる感じのをあげるなら、EQDのWhite Light(オーバードライブ)とか、Old Blood Noise EndeavorのSunlight(リバーブ)とか、DEATH BY AUDIOのGERMANIUM FILTERとかでしょうか。少し入手しにくいですが、Pedaltrainから出たDaylight(オーバードライブ)のFirst Editionも良かったですね。

 あと便利アイテムで言うとStudio DaydreamのTRIGGER3(スイッチャー)ですね。ちょっとエフェクターAB比較したい、みたいな時にはめちゃくちゃ便利で重宝してます。

 

 ...と言うわけで、今年もマイペースに更新になるかと思いますが、色々ご紹介していければなと思うので弊ブログをどうぞよろしくお願いいたします。
 それではまた。

特別編:kinotone Ribbons

 こんにちは。今回は番外編(買ってないペダルの話)です。

 実は先日仲間内で機材会(いわゆる機材を持ち寄ってワイワイ鳴らしたりする集まり)をしまして、その際に以前から気になっていた海外ペダルをお借りする事が出来まして。せっかくなので簡単に紹介などをする記事にしてみようかと。

 

 お借りしたのはこちら、kinotoneのRibbonsというペダルです。

お借りしたkinotone Ribbons。可愛らしいデザインですね。

 

貸して下さったmaさん、本当にありがとうございます!

twitter.com

2n5133.hatenablog.com

 

kinotoneについて

 kinotoneミネソタ州ミネアポリスで、ビルダーのJaak(ジャックと読むそう)が一人でやっているブランドだそうです。ビルダーのJaakは現地で電気工学やコンピュータ工学といった分野のエンジニアをされているらしく、このブランドを始める前はオートバイや農業機械向けのエレクトロニクスの設計をしたり、ご本人が所属するコミュニティ内でシンセやアンプといったものの修理事業をしたり、と言った事をされていたようです。

 同ブランドのデビュー作がこのRibbonsで、磁気テープの劣化をコンセプトにした「磁気テープエミュレータ」となっています。ちなみにステレオ対応で、信号はアナログで処理しつつデジタルでコントロールしているようです。どこかChase Bliss Audio(以下CBA)のコンセプトに近い感じがしますね。余談になりますが、CBAも本拠地がミネソタ州ミネアポリスなので、同じ都市にあって、同じようなコンセプトのものを出してるので横の繋がりとかもあるのかもしれませんね。

今回の記事の本題

 このペダルのリリースと同時期に、CBAから同様にテープ系のエミュレート(こちらのコンセプトは"VHSテープの世代損失")を志向したGeneration Loss MKⅡがリリースされていて、しかもこちらは自分で買っている...となればもう比べてみるしかない、という事で今回は双方の比較に重点を置いてみようかと思っています。

自分が購入したGeneration Loss MKⅡ。いつものCBAの感じですね。

 

Ribbonsについて

 前提として、Ribbonsは磁気テープを用いた際に起きる音質の劣化や揺れといった物を付加するペダルで、何かこれといった特定の機種を志向したものではないようです。
 特徴としては、MIDIやCVでの操作もできる事、4トラックのルーパーモードがある事、リバーブが付いている事などでしょうか。touchスイッチで追加効果(テープストップやリピーター、他にテープが壊れた時のような挙動なども可能)を付与することもできます。

 コントロールが少し複雑なのですが、4つのノブにそれぞれ4つのパラメータが対応していて、基本はペダル中央のプッシュボタンを押す事で切り替えて操作が出来る形ですね。ルーパーモードの起動も単体だとプッシュボタン+フットスイッチになるので、足下で単体でルーパーモードと通常モードの行き来は難しそうです。

 また、コントロール面で個人的に面白いなと思った点がありまして、リバーブのMixコントロールが、Mixノブが12時の位置で0%、12時を境に左に回すとテープエフェクトの前でリバーブがかかり、右に回すとテープエフェクトの後でリバーブがかかる仕様になってるんです。その辺って大抵はノブ1つで解決せずにスイッチつけたり内部的に操作する仕様だったりする所だと思うんですけどね。その代わり0〜100%をノブ全体の半分の幅で調整する都合上、微調整しにくいと言う側面もありますが...。

 こちらの強みは、ルーパー/リバーブの存在と、Touchスイッチに割り当てられる機能が豊富な事でしょうか。それと本体だけで呼び出せるプリセット数が8つと多めです。これもフットスイッチのみで呼び出し出来ないのがちょっと惜しくはありますが...。

 全体的に多機能な分、操作が足だけでは完結しきれないとか、微調整が難しいと言った部分があって、その辺りを解消したければMIDIを使いましょうと言う感じがしますね...。

 音を出してみた感想としては、これまた調整が難しいとか音が結構ピーキーだな、とか...そういう感じではあったのですが、音はしっかりテープの劣化している感じや揺れを表現出来ているように思います。テープ系の中でも割とぐにゃっと揺らぐタイプで、エフェクト感強めです。ただテープシミュといってもディレイ要素はないので、テープエコー系とはまた違う感じですね。
 同系統(ディレイなしのテープエフェクト)というと先述のGeneration Loss(Cooper fx版、CBA版問わず)とか、tefi vintage labのGolden Eraとかでしょうか。Golden Eraはvinyl(レコード)のシミュですがこれも似たようなものかなと...。

 参考までにYoutubeで見つけたデモを貼っておきます。

youtu.be

 

Generation Loss MKⅡについて

 元々Generation LossはCooper fxというメーカーからリリースされていたペダルで、何世代かのバージョンチェンジを経た最新系がCBAからリリースされたMKⅡになります。

 具体的には、Cooper fxからリリースされた初代V1→Cooper fxとCBAのコラボによるCBA版mkⅠ→Cooper版V2のリリースの後、Cooper fxの開発者のtomがCBAに加入するといった経緯を経て、今回のCBAによるMKⅡがリリースされた形になってます。

 V2については以前記事を書いてますので、そちらも参考にしていただければと思いますが、Generation LossはVHSテープによる損失をコンセプトにしていて、MKⅡになっての大きな変化としては、コントロールが一新されていて、直感的にテープ系の劣化したLo-Fiサウンドを作る事ができるようになっています。(加えてCBAお得意の本体上部側面のDipスイッチで、旧来と同様の挙動をするクラシックモードが実装されているので、MKⅠと同じ使用感で音を作り込む事も可能)

 こちらの強みとしては、ある程度まで直感的に音作りが出来る事、そしてCBAお馴染みのDipスイッチの存在でしょうか。Dipスイッチを用いたコントロールを用いる事で、本体のみで特定のパラメーターを周期的に動かすと言った事が出来たりします。隠しモードなどもこちらからアクセスできます(説明書に書いてあります)。それ以外だと、ステレオアウトを使用する際に特殊なステレオ処理を行えるモードも付いてますね。

 音に関しては、今までのGeneration Lossを踏襲しつつ、より実機に近い雰囲気の音作りが出来るようになっている印象を受けました。Classicモードにすれば実在しない想像上のテープマシンを作り上げる事も出来ますが。幅広く作れる感じで、薄くローファイな雰囲気を出すサチュレーションや揺らぎをつけるみたいな事から、テープマシンがぶっ壊れたみたいな奇々怪々なサウンドまでいけますね。

 それから、USBの端子がついておりまして、そちらを用いてAbleton Liveからプラグイン経由で本体をコントロール出来るソフトが開発されていまして、PCと連携させたりできます。詳しくは本国HPのLess Controllerのページを見てみてください。どうもMax for Live使って作ったみたいで、Liveでしか動かないのが玉に瑕ですが...。デジタルリコールみたいな事が出来るのでDTMでも使えるかもしれません。
 大抵のDTMerにとってテープ系シミュってフリーでも優秀なソフト出てますし、プラグイン使っちゃった方が手取り早い部分はあるのが切ない所ですけどね...。
 USB端子があると言うことは何らかのアップデートにも対応できるのかも...?という気もするのですが、取扱説明書などに記載がないのでこの辺りは現時点ではまだ不明です。

 こちらもYoutubeからデモを貼っておきます。

youtu.be

双方の共通点・相違点

 共通点

  • TRSステレオ対応(モノイン/モノアウト、モノイン/ステレオアウト、ステレオイン/ステレオアウトに対応)
  • MIDI、CVコントロールへの対応

 相違点

  • コンセプトが違う(Ribbons:磁気テープの劣化、GenLoss:VHSテープの世代損失)
  • 本体だけでのプリセット可能数(Ribbons:8個、GenLoss:2個)
  • 右フットスイッチへ割り当てられる機能が異なる
  • バーブ、ルーパーの有無(Ribbonsにあって、GenLossにない)
  • Dipスイッチの有無(Ribbonsになく、GenLossにある)

 すごく大雑把にまとめるとこのような感じでしょうか。それぞれできる事が違うし、良いポイントも違うので、それぞれの人にどちらが合うかはちょっと分かりませんが、参考になったらいいなと思います。

 あと、入手性について触れると、現状日本ではGeneration Loss MKⅡの方が圧倒的に入手しやすいですね。代理店(アンブレラカンパニーさん)があるし、生産も比較的安定してますので...。Ribbonsは直販のみなので...。

 

最後に

 今回取り上げたRibbonsですが、kinotoneのインスタグラムの投稿によると、近日追加されるバッチ(販売在庫)が当面の最終ロットになりそうだとの事です。もし欲しい人がいたらメーリングリストとか登録して注視しておくと良いかもしれません。それとファームのアップデートも計画されているようです。実は現状のRibbonsってオンにした際にARIONのペダルみたいに音量がやや上がるのですが、そうした不具合の修正なども含まれるそうです。そちらも楽しみですね。

 

 改めて、このペダルを貸して下さったmaさん、ありがとうございました!
 今回は特別編なのでこのくらいで。それでは、また次の記事で。

Spaceman effects Sputnik Ⅲ (Limited)

 こんにちは。本日のお題はSpaceman effectsのゲルマニウムファズ、SputnikⅢです。

Sputnik Ⅲ Limited こちらはホワイトカラーのモデル。他にも色々な色があるようです。


 Spaceman effectsはアメリカのオレゴン州ポートランドのペダルメーカーです。筐体含めて全てUSAメイドにこだわっていることと、全体的にレトロフューチャーなSFっぽさのあるデザインなこと、そして当時の機器と同じようにフルアナログの回路で作っているのが特徴のブランドですね。実際にペダルの名前も過去の宇宙開発において用いられたロケットやスペースシャトル、それから天体の名前などが使われていますし、付属品にも宇宙飛行士の装備品を彷彿とさせる銀色のシートが使われた袋が付いていたりします。

付属品諸々。説明書も認定書っぽい見た目になっていました。




 またラインナップの特徴としてStandard LineとLimited Lineというのがありまして、コンポーネントなどを厳選した上で作られているLimited Lineと、ハンドビルトなことは同様であるものの、生産面で効率化を図っていたりパーツも入手性のいいものを用いたりした量産向けのStandard Lineという差別化がされていたりします。カスタムカラーは大体Limitedの方から出ている感じみたいです。

 日本へは記録にある辺りだと2011年頃には入ってきていたみたいで、当時の代理店等はちょっとわからないのですが、現在は宮地楽器さんがWTG(ワールドトレードギア)という海外製品を取り扱う部門で国内に仕入れてきているみたいです。
 プロの使用例ですと、アジカンのゴッチこと後藤正文さんが2018年のツアーの時にAtlas IIIというブースターや、Voyager Iというオプティカル式のアナログトレモロを使用していたという記載があったりしますね。

 当該ブログの記事をそれぞれリンクしておきます。

Voyger Ⅰについての記事
Atlas Ⅲについての記事
 

そんなSpaceman effectsのフラッグシップファズがSputnikⅢで、ヴィンテージのソビエトゲルマニウムトランジスタを使ったファズとなっています。

最大の特徴がトランス等を用いたピックアップシュミレーション回路の採用で、ペダルの位置を問わずにベストな挙動をしてくれるようになっています。
 一般的なファズのほとんどはハイインピーダンスの信号を受ける前提で作ってあり、ギターとファズの間に何かペダルが入った場合に想定しない音の変化が起きることがありますが、この回路を入れる事でハイインピーダンスの信号をエミュレートする事で、ローインピーダンスの信号が入ってもギターの直後に繋いだ時と変わらない動作が出来るようになっています。それこそワウの後で使うのも、他の歪みペダルの後で使うのも自由になるので、音作りの幅が非常に広がりますね。 ※奇遇なことに、この前書いたPhantom fxのSabbath "Black Gaze"にも同じような回路が組み込まれていましたね。

 コントロールは以下のようになっています。
SIGNAL:アウトプットのボリューム
RANGE:ファズのゲイン
CALIBRATE:FILTERスイッチと連動したトーンコントロール
SCAN:発振する帯域や発振のボリュームをコントロールする(DRIFTモード時のみ動作)
FILTER(トグルスイッチ):CALIBRATEノブの操作でロールオフする帯域の選択
DRIFT(フットスイッチ):DRIFTモード(サウンドに破壊をもたらすモード)へ切り替え
 ※このスイッチはフットスイッチを押し込んだ状態で電源を入れることで動作をラッチ/アンラッチで切り替えることが出来ます。踏んだらそのままにしたいか、踏んでる間だけ切り替えたいかで選べるので便利ですね。
BYPASS(フットスイッチ):オンオフの切り替え。トゥルーバイパスのソフトスイッチになっています。

 音はゲルマニウム系の正統派のファズという感じですね。ノーマルモードは本当に正統派で、ゲインもオーバードライブ的な範囲からしっかりファズという所まで幅広く使えます。歪みの質としてはファズとして作られたペダルなので、ローゲイン帯では少しローミッドが膨らむ感があり、ファズらしくサステインは長めですね。音が良く伸びます。
 ボリュームへの反応も良くて、ギター側を絞ればちゃんとゲインが下がるので、ギターの出力とペダル側の設定次第ではギター絞ってクリーンを出すことも可能ですね。
 例えばテレキャスのシングルコイルでRANGEが9時より下ならギターのボリュームが6前後の所でクリーンまで持っていける感じでした。この設定だとギター全開にした時にミッドゲインのファズオーバードライブっぽい歪みになります。
 DRIFTモードは結構ピーキーな感じで、設定によってはひたすら発振をしたり、弾いた時にだけアッパーオクターブ的な発振を加えたりといったことが出来ます。設定次第で発振させない事も可能です。SCANノブとCALIBRATE(トーン)とFILTERトグルの設定が相互に関係して発振の仕方や音がかなり変化するのですが、この複数のノブが相互に作用する辺りはZ.Vexのファズファクトリーに通ずる雰囲気もしますね。

 総評として、オーソドックスに使えつつ、飛び道具にもなる便利なゲルマニウム系ファズかなと思います。価格的に安くはないので万人におすすめはしにくいですが...。
 ただ、ブランド全体の宇宙を意識したモチーフ性とかが秀逸なブランドだと思うので、宇宙とそれにまつわるロマンみたいなものがお好きな方は是非一度Spaceman effectsのペダルを手に取ってみてはいかがかな、と思います。

 次の記事はもう少し間の開かないうちに出したいと思います。それではまた。